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港の雨、朔太郎とバラ

雨模様ではありましたが、横浜の、港の見える丘公園にある神奈川県立近代文学館に行ってみました。070614_111301同館では現在収集資料展として、『生誕百年記念 井上靖 展』 を開催しているのですが、私は、同時に開催されている常設展シリーズの『文学の森へ 神奈川と作家たち』のほうに興味がありました。

このシリーズは、全部で3部に分けて開催されるもので、現在展示されているのは、その第1部~夏目漱石から萩原朔太郎まで~というものです。

第1部・明治から関東大震災までの作家名は、夏目漱石、森鴎外、北村透谷、島崎藤村、国木田独歩、与謝野晶子、泉鏡花、武者小路実篤、志賀直哉、有島武郎、斉藤茂吉、高浜虚子、北原白秋、そして萩原朔太郎の14人です。

それぞれの作家の書簡や、自筆原稿、初版本などが展示され、神奈川との関連などをパネルで紹介する、という展示ですが、神奈川には文士の町・鎌倉、があるだけに日本の文壇を代表する錚々たる作家たちが顔を並べています。

私が今回入館した動機は、作家の中に、若い頃から好きな詩人「萩原朔太郎」の名前があったからです。

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詩人・萩原朔太郎(1886年・明治19年~1942年・昭和17年)の作暦は、ざっと以下のようなものです。

群馬県前橋の裕福な医者の家に生まれる。親の期待に背き、中学卒業後の7年間、さまざまな学校で落第、中退、転校を繰り返し、西洋音楽と短歌作りに明け暮れる。成人となり、鎌倉で静養している時に、鎌倉七里ガ浜で、病気療養中の人妻,、エレナ(洗礼名)、本名・佐藤ナカを知る。エレナはほどなく亡くなり、断腸の想いの朔太郎は、1913年(大正2年)、エレナへの愛のメッセージともいえる自筆詩集『ソライロノハナ』を刊行する。

この自筆詩集は会場に展示されています。B5版程度のもので、うす紫色の地模様のページに、朔太郎の手書き文字の印刷、という、些か少女趣味の詩集ではありますが、朔太郎のビビッドな感覚溢れる装丁です。

この詩集の完成を機に、朔太郎は爆発的な勢いで詩を書き始める。第1詩集の『月に吠える』を鎌倉で編集、1917年刊行。宿命の恋人であるエレナへの想いは、第2詩集『青猫』に、濃厚に記される。

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(右の画像は、私が昔買った「青猫」です。)

孤独に研ぎ澄まされた鋭い感覚を、音楽的なリズムにのせ、底深い不安をイメージ化したこの詩集は、当時の文壇に圧倒的な衝撃を与えた。その後、帰京するが、朔太郎の家庭は崩壊していた。

この間の状況は、後日発表された朔太郎夫人の著書や評伝に詳しい。

070614_134201 左の画像の詩集『氷島』を実質的な最後の詩集として、1942年・昭和17年に55歳で没。

私がこの『氷島』を買った時は、「これが朔太郎最後の詩集か」という感慨がありました。

変人といわれ、生活破綻者といわれ、天才といわれた朔太郎の最後の詩集『氷島』(72~73ページ)にある、最後の詩を紹介しておきます。

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「昨日にまさる戀しさの」

昨日にまさる戀しさの  湧きくる如く嵩まるを

忍びてこらへ  何時までか

惱みに生くるものなむらむ。

もとより君はかぐわしく  阿艶(あで)に匂へる花なれば

わが世に一つ殘されし  生死の果の情熱の

戀さへそれと知らざらむ。

空しく君を望み見て  百たび胸を焦がすより

死なば死ねかし感情の  かくも苦しき日の暮れを

鐡路の道に迷い来て  破れむまでに嘆くかな

破れむまでに嘆くかな。    -朗吟調小曲ー

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精神世界に生きた、とは言い難い天才の生涯ではありますが、少なくとも、自らの精神の高揚にのみ、生きた詩人ではあると思います。

高揚して、一方では複雑な感慨を胸に館を出ると、梅雨空の下、艶やかなバラ達が咲いている庭園があり、その彼方には、雨の港がありました。

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<きょうのおまけ>

Photo_23 『燭台』(時代不詳) 高12cm、銅製。

(頒価、30,000円)

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この燭台にご興味のお有りの方は、コメント、メールをお寄せ下さい。詳しいご説明を致します。

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きょうの最後は、萩原朔太郎の詩集『猫町』と、我が家の次女です。

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070606_052501_1 ではまた。

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コメント

こんばんは。

萩原朔太郎・・・文学史で習った程度で、彼の作品は読んだこともなく・・・お恥ずかしい限りです。
(^^>”

毎回upされる、すみれちゃんの表情に癒されております。
(*^^*)

投稿: 雪国もやし | 2007年6月17日 (日) 午後 09時27分

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