清廉な才能
昔風の云い方をすれば、血筋は争えないというのでしょうか、それとも親の天分が子に受け継がれた稀有の例、というのでしょうか、明治の女流画家、上村松園の子息で、日本画家集団・創画会の創始、上村松篁の回顧展覧会を見ました。(横浜・そごう美術館、~3月24日)
上村家の日本画家としての伝統は、母・松園(しょうえん)、子・松篁(しょうこう)、孫・淳之(あつし)と、三代にわたって受け継がれていますが、今回の展覧会は2001年に亡くなった松篁の作品、65点が展示されています。これらの作品は奈良市にある松伯美術館が所蔵しているものです。
母・松園は、気品のある女性を描いた作品に定評があり、女流画家として初めての文化勲章を授賞した日本画家。そして子息の松篁も花鳥画を描き、同賞を授賞した画家でもあります。そして孫で現在、日本芸術院会員で京都芸術大学名誉教授、松伯美術館館長の淳之氏も日本画家。
このように親子三代での日本画家というのは、あまり例のないことなのではないか、と思いますが、このような才能の伝承はどのように受け継がれてきたのか、と思います。父も母も画家、その息子が、孫が、という画家一家というのはよく聞きます。芸術家一家というのでしょうか。下世話なことではありますが、松篁の母、松園は結婚したという事実は無いようで、松篁の父、という存在は、一般的にはつまびらかにされていないようです。母・松園をモデルにしたと云われる、宮尾登美子の小説『序の舞』を読むのが、唯一、そのあたりの想像力を働かせることなのかも知れません。
会場で松篁の花鳥画や童子等の作品を観て、その素晴らしさに改めて感銘を受けました。私は素人目に「上手い」と思う作品は、万人に通用するものだと思っていますが、松篁の作品はそれだと思います。これまでの数ある日本画家の中でも、植物を描く力は群を抜いているのではないかと思います。清楚でありながら豊かな色彩、そして構図の見事さは、衝撃と云えるほどのものでした。これまでも折にふれ松篁の作品は観ているのですが、これほどの作品群は圧巻でした。
・
さる美術大学の教授が、生徒達に「素人に分かるような絵を描いているようじゃ駄目だ」などという意見を言っているのを聞いたことがありますが、私は(絵の)素人に分からないような絵を描いているうちは、その作家は大成しないのだろうと思います。どれだけ平明な絵を描くかが才能であり、技術は一般的には隠されているという作品が、万人の心を打つ作品なのだろうと思っています。描く技術というものは、画家にとっては当たり前に必要なものであり、それをひけらかすのは、それこそ素人、と思っています。技術だけでは人の心は打てません。
人の情念を描くのが画家の習い、とは思いますが、その作家の思想の高さが、作品の、作家の清廉さを際立たせるものだと思う一方、日本画壇のこれまでを仄聞すると、作家同士、師匠と弟子といった人間関係が複雑で、ドロドロしたものがあるようです。その上にこのような見事な作品が生まれる、という、人間の精神構造の不思議を垣間見た想いの展覧会でした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<きょうのおまけ>
古代中国で、悪霊を追い払うと信じられた伝説上の神獣。
長6cm、巾3cm。
この辟邪にご興味のお有りの方はコメントメールをお寄せ下さい。詳しいご説明を致します。
yoshida art
・
「ワタシで~ス。蕾(つぼみ)で~ス。春で~ス。みんなも春になったァ~?。」
ではまた。

最近のコメント